2011年出版のBattle Hymn of the Tiger Mother(タイガー・マザー)でエイミー・チュア教授は世界的に有名になった。
専門分野とは関係のない中国式スパルタ教育の是非で世間を騒がせた。二人の娘さんをハーバードとイェールに入れる事ができたので何を言っても許させる立場だったろう。
子供に有無を言わせず、ゴールに突進させるやり方が目に余ると批判をした人が少なくなかった。
私はエイミー・チュアのタイガーマザーには格別興味はなかったが、彼女が書いたPolitical Tribeには興味があって読んだ。
人種間の軋轢は何故発生して、それが政治とどのようにかかわりをもつのか知りたかった。アメリカのノー天気な「デモクラシーと市場主義」の外交方針を批判していて、なるほどと納得することが多かった。
現在、アメリカでは人種間の緊張があるのはご存じの通り。そういう環境下で彼女はアメリカのアカデミアで最高峰に立っている。彼女自身によればイェール・ロースクールの教授陣の中でアジア人は一人だけだという。
そういう彼女(学界セレブ、スレンダーな美人教授。法曹界や政界にも繋がりを持つ)が4月に入って、「アルコール付きのディナーパーティーを自宅で学生たちに提供した。また、small group leader (少人数の学生を専属で面倒を見る、メンター制度のようなものらしい)のリストから外された」と本人の知らない所で情報が洩れて、学内新聞に書かれた。
「どうでもいい、どうせ、そんなにやりたいわけじゃないし」と彼女はコメントした。
問題がアルコールを提供したことか? 大学から先生方に「Covid-19の問題があるので、集まりをするな」というようなお達しがあって、それを破ったのか? 彼女の言い分も、学部長の決定理由も、学内新聞もそれぞれ部分的なので、本当のところは分からない。アカデミア・ゴシップという感じがなきにしもあらず。
しかし、アルコール付きディナーの問題は今年に入っての問題ではなく、既に起きていて大学側と「そういう事を今後はしません」という約束をしているのだそう。また、同じロースクールで教えるご主人もセクハラ問題で2年間の教授停止を受けていて、決して学生がいる場所に顔を出してはいけないことになっているとも言う。
彼女は「悪いことは何もしていない。さっぱり分からない。アジア人差別、暴力事件などで怯えている学生の面倒をみた(家に呼んで話を聞いてあげたこと)ことが問題になったのかしら?気の毒なことに大学側は全く何もしないし」と、アジア人差別問題も絡めている。
最高裁の判事を初め、法曹界の重鎮はこのロースクールか、ハーバード・ロースクールを出ている人が多い(出ないとなれないかもしれない)。そのための教育を受ける側、教育する側、事務方が些細なことで揉め合っているように思えるが、どうなのだろうか。
最高裁判事のBrett Kavanaughが過去の女性問題で揉めている時に、エイミー・チュアは公にサポートしていた。クラークシップ(法学インターンシップ)の太いルートを持っていて、娘もKavanaughのクラークシップを取ったという批判もある。そういうポリティカルパワーを面白くないと思っている人がいても不思議ではない。この際、アジア人(中国人)というのは別の話ではないだろうか。
ロースクールの全教授陣に宛てて自分の立場を示し、学部長に明確な答えを出せと言って逆襲している姿には凄みがある(手紙だけだが)。2019年にMitのメディアラボのディレクターだったJoi Ito (伊藤穣一)がジェフリー・エプスタイン(未成年性的虐待で拘置中に自殺、または怪死)から寄付を受けたと認め、あっさりポジションを辞任したのとは戦い方違う、同じアジア人でも。
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